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船場建築祭

ずっと昔、中之島のダイビルに惚れてそこにある会社で働いていたことがあります。
近年、このダイビルをはじめ大阪の近代建築の再活用が(細々とした活動ながら)活性化しつつあるようでちょっとうれしいです。

そんなムーブメントのひとつ、大阪市立大学によるイベント、船場建築祭のシンポジウムに行ってきました。非常に示唆に富んだ内容だったので、忘れないうちにメモを残しておきます。

話のストーリーとしては…

街を歩いて「このビルかっこいい!」と気付く
 ↓
そういうビルに魅せられた人たちがショップをやったり、
イベントをやったり
 ↓
建物の魅力がどんどん伝わっていく
 ↓
そうすれば、ビルの関係者も下手なことがやりにくい。
建て替えるにしても、それなりの価値のあるものを
作ってくれるんじゃないだろうか。
 ↓
街も栄える。ウマー!
 ↓
以下繰り返し

ということを提案されていて(こんなに軽くないですよ)、最後の結論としては
「大事な建物は"使い倒して"街を変えよう」ということのようでした。


内容は、大大阪をめぐる資料や著作といえばこの方、大阪市立大学の橋爪紳也さんと、1920年代をテーマにした著作で著名な海野弘さんの対談。海野さんの大阪の近代建築をめぐる著作『モダンシティふたたび』からちょうど20年ということです。(この本は大阪産経新聞夕刊の連載企画だったそうです)

そして、都市計画が専門の東京大学助手中島直人さん、東北大学助教授の五十嵐太郎さん、ダイビルでさまざまな仕掛けをしておられるアートアンドクラフト代表の中谷ノボルさん、graf代表のデザイナー・アーティストの服部滋樹さん、『東京建築散歩』など、市民の目で建築とのかかわりをとらえるライターの矢部智子さんによるパネルディスカッション。船場建築祭で開催されているアートイベントの紹介など。

以下、気になった発言をまとめます。ちょっと意訳ありです。誰のお話だったか定かでないもの、間違っているものもあると思います。自分用メモ。


■モダニズム建築から読み取るものは郷愁ではない

海野先生の話から。
1920~30年代というのは世界が同時多発的に新しい方向に動きはじめた画期的な時代。パリの20年代、NYの20年代があるように、同じような新しい精神が東京の20年代、大阪の20年代にもあった。この時代、日本もヨーロッパやアメリカと同時に動き始めた。それを感じることができるのが当時の近代建築である。

例えば、ガスビルは、黒い甍の町家の家並の中に出現した、新しい時代へいざなう巨大な白い客船。当時の人々はどんなに驚いたか。そういう、とんでもないものを生み出した時代の精神、こころざしを読み取って、今の時代の新しい力にしていくということが、近代建築との関わりにおけるテーマのひとつ。


■都市の出現によって街との絆を発見する

大大阪という日本最大の都市が形成され、大通りが出来ることによってその裏通り、路地というものがもうひとつ見えてくる。都市の二重化。路地は古びて滅んでいくようで、そこにこそ、ベンヤミンのパッサージュ論的都市論が立ち上がる。路地には郷愁だけでなく、都市計画から抜け落ちた新しい発見がある。都市、建築、文学、風俗、さまざまなジャンルの枠を外した新しい都市論。

ベンヤミンの言う遊歩者(フラヌール)の出現。それこそ「心ブラ(心斎橋)」「平ブラ(平野町)」。盛り場をブラブラ歩くことで街との絆を作っていくこと。それこそが都市と人との関係。
現代の建築家は、都市と人々の絆をどのように作っていくかを考える必要がある。


■見ることは歩くこと。都市の中へ入っていくこと

見るという字は、目に足がついている(本来は膝をついてよく見るという象形)。街を歩いて、近代建築を見てみることこそ大事。座ってモニタを見ているだけではビジュアルカルチャーにはなりえない。都市の中に入って歩き回っていくことで発見するものがある。

橋爪さん>それぞれの絆を見つけ出す試み、そのひとつが今回のアートプロジェクトとか。


■「続・近代建築」の創造的再認識が必要

中島さんの話
景観という概念が登場したのが1935年都市美協会による「大東京建築祭」。「雄大荘厳な建物が三々五々あるからといって美しいのではない…」町並みという視点の提示。

北船場の近代建築は点在している。実は昔から点在していた。町並みというわけではない。
しかし、街角に多くあるため景観のポイントとなっている。今は周りを取り巻くものが調和していないのが課題。

今の大阪市街地域は、タワーマンション建築ブーム。それらと近代建築の間には大変なギャップがある。その間をつなぐものとは?実は船場地域には戦後~1970年代の建物が多い。しかし価値を認められずに入居率が低く消え去るものも。それら「続・近代建築」(村野藤吾の森田ビル、輸出繊維会館など)が近代建築の点在を埋める可能性がある。

船場の町並みの時間的空間的連続性は、すぐれた続・近代建築の創造的再認識によって保たれるのでは?

>中谷さん
戦後の国鉄建築もいい。戦争終わってすぐに駅を作ろうという意気込みがすごい。時代は違っても近代建築の精神と通じるものがある。


■リノベーションとは使い勝手を変えていくこと

中谷さんの話から。
ダイビルを使っているけれど、空調などの設備を入れ替えれば、古い建物だからといってマイナス面はそんなにないのでは?木製の窓枠とか、屋上とか、今のビルにはないものもある。手入れをして使っていけば、古いビルの余命を少しでも長らえることは可能。

リノベーション、コンバージョンとはハード(建築そのもの)を変える事ではなく、新しく使い勝手を変える事。80年前には考えられていなかった用途に転用しながら使っていくことこそが、建物の寿命を延ばすこと。


■使い続けることで事業主にプレッシャーをかける

そうして使っていくことで、ユーザーは古い建物が好きになるし、皆の視線を建築に向けることもできる。近代建築、続・近代建築、最近の建築、という具合に。それが、設計者や事業主にプレッシャーをかけることにもなるはず。いざ建て替えるという場合にも「あの建物の後にどんなものが建つのか」という期待に応えなけばならなくなる。


■不便であるがゆえにアイデアが生まれる

服部さんの話から。
多くの公共建築はハードとソフトのバランスが悪く、プログラムが成長しない。そのため、時間の経過と共に建物の利用価値がなくなっていく。つまり、そういう建築は機能のためだけに建物がある。だから使うだけで終わってしまう。

機能性の低い不便な建物からは、不便ゆえアイデアが生まれてくる。不便を楽しむことによって楽しい生活が生まれてくることもある。


■ごくふつうの人が気軽に使えること

矢部さんの話から。
普通の人に「あの建築はいいね」といってもわかってもらえないが、「あのカフェは居心地いい」とかいうと同意してもらえる。外から見るだけだったり、立ち入り禁止の場所があったりするより、普通の人が気軽に訪れることができて、実用品のように使える建築であればすばらしい。

>橋爪さん
たとえば「洋館がステキ」という気持ちは専門家が忘れている感性。つい学術的な目で見てしまい、建物の居心地のよさとか存在感とかに気付かないのは反省すべき。建物は使われるためにあるもの。古いビルがレストランなどとして使われることで、建物の価値だけでなく、そういう資産を抱えている街の価値も上がる。


■リノベーションはトップダウンでなくても進行できる

五十嵐さんの話から。
すでに建物の形があるリノベーションの場合、使用者が自分のスキルを持って進めていくことができる。特にアートなど。新築のように、必ずしも専門家やお上によるトップダウンで進める必要がない。

この敷居の低さによって、周囲をまきこみながらプロジェクトを進めることもできる。カタリスト(触媒)としてのリノベーション。


■建築は未来への伝達装置

なぜ古い建物を残すのか。新築ではできない無数の時間の痕跡がコラージュされている。そのなつかしいという気持ちがさらに人々をひきつける。そうして使われていくことでさらにその魅力は継続して蓄積していく。

建築技術は常に更新されるが、建築はその時点の技術の固有性が残っていく。建築とは、過去の反復ではなく、そのときの最先端であるべき。近代建築には、そのときに刻まれた未来が残されている。それを今見れることも重要。建築は未来への伝達装置。


■廃墟になる自由。ゆるく使うということ

オルセー美術館は、駅舎としての使命を終えてから、50年間使われない時期を経て美術館になった。古い建物について、開発か保存かという二元論で、使わないので更地にしてしまうというのではなしに、使わずそのまま放っておくという選択肢もありうるのではないか。廃墟になる自由。

また、1930年代のパリ万博の時のパビリオン、パレ・ド・トーキョーは、内装を剥がしただけで改装せず美術館として利用されている。それはそれで刺激的な空間。展示があるたび整えている。生きている廃墟。

大谷幸夫、空地の思想。ずっと先の使い道は分からない、初期の計画で全部決めるのではなく、空地のままにしておくという発想にも通じる。

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1920年代、世界同時最先端の痕跡である近代建築、そのありえないパワーを見て触れて理解して楽しめば、現在の街を作るパワーへとつながっていくのではないだろうか。そんな感じ。

個人的にとっても好きな60年代~70年台のモダニズム建築がこのように位置づけされているというのはちょっとうれしい。

追記:こちらのスタッフの方?のりみさんのブログには写真などもあわせて、会場の雰囲気などがよくわかるレポートをアップされています。トラックバックさせていただきました。
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by radionova2 | 2006-10-08 23:59 | Weblog